私の好きな魚の一つだ。普段は小魚が集まる岸辺の草陰や石垣の隙間などにじっとしていて、小魚が目の前に近づくと電光石火飛びかかる。時には底の泥に身を隠して目と頭の上だけを出していることもある。
こんなことがあった、一つは、中くらいのドンコが蛙をくわえたのはよいが、飲み込むことも吐き出すこともできず、腹を上にしてひっくり返っていた。捕まえて蛙を引き出してやるとドンコはよろよろと泳いで行った。蛙は死んでいた。
もう一つは、加茂川のドンドン(堰のこと)下の深みの岩の間をミミズの餌でさぐっていたら20センチ級の大物が釣れた。肩にヤスで突かれた傷跡があったが、餌を食うほどの元気もので、鈎をはずそうとしたらいきなり左手の親指に食いついた。ドンコの歯は小さいのがいっぱい生えているだけなのだが、噛む力が強いので、後から見ると指の腹にじわりと血がにじんでいた。ドンコはほとんど頭ばかりだが、肉は身離れもよく大変旨い魚だ。
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